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嵐が扉を烈しく打ち開いた音に、ジークリンデは大きな悲鳴を上げる。怖がらないで大丈夫だよ、入ってきたのは、ほらっ、春の兆しだ・・・、と紅潮したままのジークムント。ジークリンデは夫のフンディングの手下達が入ってきたのかと驚いたのでした。誰もいないことが確認できると、若い2人の抱擁はエスカレートしていく。ジークムントは父の残した霊剣ノートゥングを得た心強さ、トネリコの幹に深く突き刺さっていて誰にも抜くことの出来なかった剣をことも容易に抜き取った男に期待感を高めるジークリンデ。不安で抑えていた感情が吹っ切れると、2人は身体を重ねてしまう。そして2人はフンディングの家から逃走する。
「冬の嵐は過ぎ去り、快い月となった」(ジークムント) 「寒い冬の日々に私が憧れていた春こそあなたです」(ジークリンデ)
無限旋律と言われるワーグナーの音楽のもっともたる「ワルキューレ」の中で、烈しく扉の開く音楽の後一瞬の間があって優しく春が入ってくる。アリア「冬の嵐は過ぎ去り、君こそは春」としてテノールのレパートリーとして古くから張りのあるテノール歌手は得意としています 。ワーグナーの音楽は作品の世界観などの要素が深く影響しているので、単独で歌われることは少ない。きっと歌う方も気持ちを持って行くのが難しい曲なのかも知れませんね。
その点、愛の場面を切り抜いたと思って歌ってもらった方が苦労の果ての安らぎとの遭遇の歌ではなくて、醸し出すエロティックが楽しめるんじゃないかしら。[ JUGEMテーマ:オペラ ]
ライトモチーフの扱いは美しく、なかでも木管楽器の演奏は特筆すべき美しさ。室内楽的な叙情性の際だった音楽だった・・・と、フィリップ・ジョルダンとパリ・オペラ座管弦楽団を称賛しているニュースが充分に浸透していた通り日曜日(2010年9月12日)の午後に、この秋最初の美しい時間を持たせてくれたのがNHK-FM「海外オペラアワー」で放送された、今年6月にパリ・オペラ座で上演されたワグナー作曲、楽劇「ワルキューレ Walküre 」でした。
指揮はアルミン・ジョルダンの息子。父親譲りを感じさせるほどフランス流のワグナーと言ったら他を凌いでいますよね。一言で言って色彩的でメリハリのある音楽。ワーグナーになじみのないリスナーでも入りやすい音楽造りをしています。
色々と目にしていた評判通りに満足のいく美しい音楽でした。ジョルダンは第一幕冒頭の嵐のシーンは烈しく速いテンポで責め立てるように進めていて、歌手達の登場を今か今かと待ち焦がれているような演奏でした。主役の2人が登場すると、烈しく早い前奏曲は一転。とてもロマンティックなチェロの独奏で歌手達の歌を引き立てていました。
第一幕では、ジークムントを歌うロバート・ディーン・スミス、ジークリンデを歌うリカルダ・メルベトの2人共に好調。バイロイト音楽祭での上演でのお馴染みのコンビだけに歌唱は安心して聴けます。見せ場、父親が残した一振りの名剣ノートゥングを手に入れたくだりは感情の高まりに従った烈しい音楽。ロバート・ディーン・スミスはバイロイトでも、ヴェルゼ!ヴェルゼ!と2度の父親への呼びかけをとても長く引っ張りますが、この上演でも同様で尚のこと第一幕の要になっているロマンティックなワーグナーでした。
▽フィリップ・ジョルダン指揮による
ワーグナーの楽劇“ワルキューレ”
「楽劇“ワルキューレ”」 ワーグナー作曲
(第1幕:1時間04分52秒)
(第2幕:1時間33分46秒)
(第3幕:1時間09分48秒)
ジークムント…(テノール)ロバート・ディーン・スミス
フンディング…(バス)ギュンター・グロイスベック
ウォータン…(バリトン)トーマス・ヨハネス・マイア
ジークリンデ…(ソプラノ)リカルダ・メルベト
フリッカ…(メゾ・ソプラノ)イヴォンヌ・ナエフ
ブリュンヒルデ…(ソプラノ)カタリーナ・ダライマン
ゲルヒルデ…(ソプラノ)マージョリー・オーウェンズ
オルトリンデ…(ソプラノ)ゲルトルート・ヴィッティンガー
ワルトラウテ…(メゾ・ソプラノ)シルヴィア・ハブローヴェッツ
シュヴェルトライテ…(アルト)ヴィープケ・レームクール
ヘルムヴィーゲ…(ソプラノ)バルバラ・モリーヤン
ジークルーネ…(メゾ・ソプラノ)ヘレーネ・ラナーダ
グリムゲルデ…(メゾ・ソプラノ)ニコル・ピッコローミニ
ロスワイセ…(メゾ・ソプラノ)アタラ・シェック
(管弦楽)パリ・オペラ座管弦楽団
(指揮)フィリップ・ジョルダン
〜フランス・パリ・バスチーユ パリ・オペラ座で収録〜
<2010/6/26>
(ラジオ・フランス提供)
この「ワルキューレ」は今年プレミエをむかえた演出。昨年の「ラインの黄金」に続くギュンター・クレーマーの新演出ですが、こちらについてはかなり問題有りという評価が多くあります。今回はFMのみの放送でしたから第1幕、第2幕が終わったあとの絶大な拍手、ところが第3幕の後のブーイングに演奏は1番良かったのに?と前知識無く聴いていたら思ったことでしょう。
タンホイザーでの全裸の女性たち(薄いストッキングで首までを覆ったもののようでもありましたが、総て透けて見えていました。薄暗い舞台の照明でははっきりとは分からないものでした)に驚いたのが初めてオペラをみるようになった頃。
昨年のマイスタージンガーでは男性が下半身露出していましたね。
バスチーユのワルキューレでは、ワルキューレ達は乙女と言うことでの白い衣装で統一。第3幕の傷ついた戦士達の中からワルハラに連れて行くのにふさわしい英雄だけを選りだしている場面では、白衣のようにも見えます。
多分にダブル・ミーニングがあるのでしょう。白衣のワルキューレに解放されているのが、全裸の戦士達で皆性器を露出しています。
絵無しで何の予備知識も無しに聞いていました。こんな過激な演出だんたんですねー
と言う反応もあるでしょう。でも演出の意図はわからないし何か衣装を用意すべきかというと、こちらも意味のあるような衣装は必要にない共思えます。全裸で寝ているだけの骸・・・ただ、そう感じれば良いんじゃないかな。ともかくもこの場面での演出に疑問があったとかで第3幕が終わったらブーイングとなったのでした。
わたしは取り立ててつくじる程のものではないと思うけれども、NHKで映像付きでは放送されるとしてもぼかすんでしょうか?
“絵無しで予備知識も無しに”聴いた番組リスナーは少なくはなかったとは思います。今回のワグナー演奏は日本のワグネリアン(ワグナー音楽信望者)には満足の出来る音楽だったかどうかは、ワグナーの音楽に求めるものが作品によって違うようですけれど納得させられるものではなかっただろうというのが多くのレビューに共通しています。でも、わたしは今回のワグナーは色彩的で屈託がない。カジュアルに楽しめる“ワルキューレ”の音楽だったと喜んでいます。[ JUGEMテーマ:オペラ ]
クラシック音楽史に残るであろうプロジェクトの時間が迫りました。日本時間で午後10時50分から、「バイロイト音楽祭のワルキューレ」がテレビで世界初の生放送。
バイロイト音楽祭は、作曲家ワグナーがドイツのバイエルンに建設した歌劇場で7月、8月の夏の期間だけ行われます。上演されるのはワグナーが作曲した10作品だけ。「さまよえるオランダ人」、「タンホイザー」、「ローエングリン」、「トリスタンとイゾルデ」、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、「パルジファル」。それに「ニーベルングの指環」としてセット上演される「ラインの黄金」、「ワルキューレ」、「ジークフリート」、「神々のたそがれ」です。
ゴージャスで絵巻物語りのような「ラインの黄金」と、作品の神の主人公英雄ジークフリートの成長と神々の手から人間の手に世界が受け渡されるまでを描く「ジークフリート」と「神々のたそがれ」の前後編の間に位置した「ワルキューレ」は動きとスペクタクルがいっぱい。第3幕の序奏と第一場にあたる「ワルキューレの騎行」はよく聴かれる音楽ですね。
ただ1人の作曲家の作品だけを上演する歌劇場の音楽祭。「バイロイト詣(もうで)」という言葉があるほど、オペラ・ファンが一生のうちには行ってみたいと思っているほどチケットは何年も先まで予約で埋まっています。「詣」と言われるほど観劇には覚悟が必要です。覚悟と言っても命を奪われるという事はありませんけれども、歌劇場は山の奥の方にあるので周囲には宿泊施設も少ないと言います。そして歌劇場の設備、教会の椅子のように木製の長いす。クッションなどはありません。慣れた人はお尻に敷く物を持っていくのだとか。
長いすなので1人勝手に席を立つこともまま成りませんよね。そして上演時間の長さ。ワルキューレはCD4枚組と言えば、分かり易いですね。
第1幕、約1時間。
第2幕、約1時間30分。
第3幕、約1時間15分。
これは放送で観られることは大歓迎だ!とハッキリ成りそうですけど、各幕の間の休憩時間が90分はありますからはたしてその間が持たせることが出来ますやら。
放送は午後10時50分から、翌朝の午前5時過ぎまで。「ニーベルングの指環」のチクルス(4作品セットでの上演を「チクルス」と言っています)は今年の上演でひとまずおやすみ。数年おいて新演出での登場と成ります。2008年、2009年を収録した映像はありますから、放送トラブルが起こってもフォローは出来ると思います。ポッドキャストで音声の生中継は好調。放送のバックアップも万全と言うことで世界初の生放送と成ったのでしょうね。
寝ないで頑張って、歴史の立会人になりましょう。[ JUGEMテーマ:今日、こんなこと、あんなこと、あった。 ]
***
Die Walküre
Cast 2010
Conductor Christian Thielemann
Director Tankred Dorst
Stage design Frank Philipp Schlößmann
Costumes Bernd Ernst Skodzig
Dramaturgy Norbert Abels
Siegmund Johan Botha
Hunding Kwangchul Youn
Wotan Albert Dohmen
Sieglinde Edith Haller
Brünnhilde Linda Watson
Fricka Mihoko Fujimura
Gerhilde Sonja Mühleck
Ortlinde Anna Gabler
Waltraute Martina Dike
Schwertleite Simone Schröder
Helmwige Miriam Gordon-Stewart
Siegrune Wilke te Brummelstroete
Grimgerde Annette Küttenbaum
Rossweisse Alexandra Petersamer
***
クラシック音楽の愛好家と言っても一括りに出来ないほど、様々に枝分かれしています。コンサートで実際の演奏に接することを主にして、レコードやCDは演奏会の様子を振り返るためのものとして鑑賞している人々。レコードは演奏会の再現ではないと、理想の再生を目指しているオーディオ・ファイル。
レコードやCDなど音源再生で難しいのが、歌と演奏の両立。音源再生ではなくて、音場再生で難しいポイントです。ジャズヴォーカルにフォーカスを当てているオーディオが、オペラを楽しく聴く事が出来たりと意外だったりもします。他にも素因はあると思うけどジレンマもあって、管弦楽曲中心に聞くようになってしまったオーディオマニアは少なくないんじゃないかしら。
ウィーン・フィルが新年に聞かせてくれる楽友協会大ホールの音。他にもブラームスホールや、室内楽向けのシューベルティアーゼがあるように、オペラ座は装置の問題だけではなくて“歌を聞かせる”為の器として独立している。これは大切なことだと思います。
ワグナーが自分のオペラを理想的に上演させるために作ったバイロイト歌劇場。録音だけで聴くとオーケストラの並びが左右逆に聴こえてきます。そういうところも独特なら、オペラ好きの中でもワーグナーのファンはまた独特なクラスタです。でも、NHKで毎年年末に全公演が放送されると言うことは一握りの存在ではないと言うことですよね。例え少なくてもNHKに要望する力が大きいんだと思います。
2010年8月21日、今年のバイロイト音楽祭の上演から“ワルキューレ”がハイビジョンで生放送されることになりました。
キャスティングは以下の通りです。
録音だけを聞いて、苦手意識を感じている音楽ファンのイメージを変えることが出来るようにと胸の内で期待しているところです。[ JUGEMテーマ:なんかとっても誰かに勧めたい音楽。 ]
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Die Walküre
Cast 2010
Conductor Christian Thielemann
Director Tankred Dorst
Stage design Frank Philipp Schlößmann
Costumes Bernd Ernst Skodzig
Dramaturgy Norbert Abels
Siegmund Johan Botha
Hunding Kwangchul Youn
Wotan Albert Dohmen
Sieglinde Edith Haller
Brünnhilde Linda Watson
Fricka Mihoko Fujimura
Gerhilde Sonja Mühleck
Ortlinde Anna Gabler
Waltraute Martina Dike
Schwertleite Simone Schröder
Helmwige Miriam Gordon-Stewart
Siegrune Wilke te Brummelstroete
Grimgerde Annette Küttenbaum
Rossweisse Alexandra Petersamer
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