わたしはピアノ曲が大好きです。生まれた時からオルガンがありました。足踏み式の古いオルガンでした。それは母が嫁入りの時に持ってきたものです。女学校を出て小さな分校で、苦手な音楽を教えるのだけは不得手だったと語っています。
難産で生まれたわたしに、無理せず、楽しんで、体力を付ける機会になったと思ったに違いありません。足踏みを休むと音が出なくなる、音と遊ぶためには両足をばたばたしなければなりません。音の出るオモチャ代わりに、最初のわたしのお気に入りだと言えるかもしれません。
オーケストラに夢中になるのは小学校4年生の時。はじめて小遣いでLPレコードを買ったのが、ブラームスの交響曲第1番。アンチェル指揮のチェコ・フィルの録音。それまで折あることに母がすすめたテレビのクラシック番組で、耳にしたオーケストラとは響きが違うので夢中になって一日中聴いていました。カラヤンの演奏をテレビで観たのも同じ頃。数年後には自分から新聞のテレビ欄に印を付けて、先約特等席で見入った演奏に先月BS-hiで放送されたベートーヴェンの田園もありました。中学に入って知り合った友は、土曜日は学校を休んでいました。先生も認めていることでした。型どおり授業を受ける必要もないんだと感じたのが、現在の生活にも及んでいるのかしら。
彼は土曜、日曜は飛行機で東京へ毎週通っていました。中学を卒業すると、国立へ入りました。彼のお父様が、地元の音楽大学の先生をされていてたくさんのレコードを揃えておいででしたので、彼に頼んでテープにとってもらっていろいろと聴きました。今思い出しても、すごいものばかりだったと言うことです。カラヤンでも、ブレインとのモーッアルト。セル/クリーヴランドの第九と言った調子なんですから。お父様には感謝いたしております。
中学卒業間近に、吉田秀和先生の解説でワーグナーの《リング》を知って、高校時代はオペラに夢中。LPレコードで聴ける《リング》は、ベーム、ショルティ、ブーレーズ、カラヤン、ヤノフスキの順で聴きました。この5セットすべてを買ったレコード店で、今はわたしがレコードをすすめているのですから、新しくクラシックに関心を持たれる若い人に、自分の体験を参考にご恩返しにもなるとうれしい思いです。
オペラに集中したのは、地元のNHKで土曜日のリクエスト・アワーの担当アナウンサーがクラシックが好きな方で、3時間の番組を三部構成として、洋楽、邦楽、そして最後の1時間をクラシック・レコードをまるごと一枚聴かせてくれました。そのほかでも、交響曲や協奏曲はFM放送で接しやすかったために、オペラのレコードを選択しやすかったのです。
折しもモーッアルトの没後200年で、少年モーッアルトのオペラが次々と録音、発売されました。わたしのモーッアルトの旅は、オペラをほとんど聴く方が先でした。
音楽コンクールで仲道郁代さんを観たのは、その後。仲道さんの紡ぐピアノの音に魅了されました。肩から肘、肘から手首、そして指先。音符を口ずさむような表情にも釘付け。今でも、NHKの名曲アルバムや番組告知で聞こえてくるピアノに、ハッとすると振り返るとやはり仲道さんの名前があります。意識しているわけでもいつもCDを聴いているわけでもないのにアメイジング。
一年の休眠を解いて、音楽の、それもクラシックについて書いている方が多く、更新が容易なのでJUGEMでブログを再開。今日で50日を数えました。開設当初は、新着サイトで紹介されますから多くの方にご覧いただけました。、音楽の範疇には留まってはいると思いながらも、アニメ音楽やジャズへとブログ・タイトルの“クラシック音楽”から脱線ばかりでどうかと思い始めた頃、
〜愛の一行詩〜 さんからお願いする前にお友達にしていただき、“ありのままに”のアマデウスレコードの背中を押して下さいました。
まだまだお目にとまる機会も少ない“クラシック音楽を楽しむアマデウスレコード”に、今日は
Lubtech-sato ルブテック佐藤の徒然紀行 さんと、
この空の下 さんからお友達のお誘いを受けました。うれしいです。みなさん素晴らしい情報をお持ちです。
ルブテック佐藤さんの娘さん達は、お二人とも若きピアニスト。ウィーンで活躍されている“
こころのおと ”さんをご紹介いただきました。そちらでお姉さんの“
ema's room ”へ伺って、「あら」何度か伺ったことのあるブログでした。
良く聴かれている《月の光》は《ベルガマスク組曲》の中の一曲です。《喜びの島》はこの組曲のひとつとしてドビュッシーは作曲しました。この組曲と一緒に出版されなかった曲はもう一曲《仮面》。組曲のなかで弾かれる《月の光》は、単独で弾かれる時と印象が違って聞こえます。出版社の都合(?)で一緒にしてもらえなかった2曲をひとつの流れで演奏されるとどのように楽しめるのでしょう。
マウリツィオ・ポルリーニは美しいピアノを聴かせてくれます。先日デビュー盤として相前後して発売された、シューマンとシューベルト、そしてショパン・コンクール受賞後に録音されたショパン。この3枚を発売当時のLPレコードの、オリジナルのドイツ盤で続けて聴くことが出来ました。コンクールでのショパンでは、録音条件もあったのでしょうが、シューマンとシューベルトは最近の録音と同じ響きがピアノからすることに感心しきり。録音の仕方にすでに方針があったのかとも思いましたが、“
クラシック音楽ぶった切り ”さんに「やはりテクニックが抜群に優れているということでしょうね。それゆえ、あの磨きあげられたタッチが生み出されるのだと思われます。」と教えていただきました。
オーディオ通の肩からクラシックの良いピアノの録音をと求められた時にすすめるのがポルリーニのCDです。ピアノの一音一音の粒立ちの際だっていることはもちろんですが、ピアノの全体像が見えるような録音なのがすすめている点です。立派なスピーカーをきちんと調整されていても、ポルリーニのピアノは楽しませてくれます。スピーカーに対して、近づいて聞く音と離れて聞く音にどの方も驚かれたと感想して下さいます。近くで聴くとピアノに頭をつっこんでいるように響きます。わたしは普段聴いているところから後ろへ下がって聴くことをすすめています。するとピアノの位置が見えるように聞こえます。
ポルリーニはドビュッシーの《前奏曲集第一巻》につづけて、《喜びの島》を組み合わせています。CDでは《前奏曲集第一巻》と《第二巻》を共にいれているものが少なくありませんが、ポルリーニのこの一枚は45分ほどですが、これにさらに加えるとすばらしさを損なってしまいます。《喜びの島》が調和をまとめています。はじめて手にした時は、物足りなさを感じるだろうと思い聞き始めました。《喜びの島》を単一で解釈するのではなく、大きな流れにとらえる可能性を聴かせてくれました。
《喜びの島》は、ドビュッシーがジャン・アントワーヌ・ヴァトーの絵画『シテール島への船出』に触発して作曲しました。それにはギリシャ神話の一場面が描かれています。このところ良く演奏、録音されるのは「のだめカンタービレ」のエピソードが印象づけてしまったのか、現実のシテール島へのセイリングを音に置き換えているように感じます。
お友達のお誘いを受けたルブテック佐藤さんに教えていただいた、“こころのおと”さんのウィーンでの活躍の祝福に替える想いで《喜びの島》の途中までの録音に、サロンでドビュッシーとショーソン夫人が連弾で楽しんでいる様子を添えてみました。
申し訳ありませんが、まだご当人との連絡はしていません。お許しをいただければ、“こころのおと”さんの写真を使わせていただきたく存じます。
仲道郁代,ドビュッシー
BMGメディアジャパン
¥ 2,711
(1997-09-26)
【ディスク1】
ベルガマスク組曲
2つのアラベスク
子供の領分
版画
喜びの島